午前1時のレモネード

翌朝の化粧ノリより、夜更かしの楽しさが大事。

すぐ隣のパラレルワールドを、忘れない

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数週間の有給消化に入って、気付いたことがある。

社会人になってからの私はめっきり「平日の昼間」の世の中のことを忘れていた。

朝出勤して、帰る時間になって気付けば日が暮れているから、この季節は何時まで明るいとか何時から涼しくなるとかそんなことも分からなくなっていた。

そう気付いたつい最近になって他の方のブログでも似たことに触れた記事を読んで、自分だけじゃないんだと安心したけれど、きっちりカレンダー通りの生活をしていると本気で分からなくなるものだ。

 

子どもの頃、平日の昼間は風邪を引いて学校を休んだ時だけ味わえる特別な時間だった。

田舎の住宅街はひっそりとしていて、外は明るくて鳥なんかも鳴いているから孤独で不安ではないけど、それでも「世界には自分だけ」みたいな不思議な感覚にわくわくしていた。

大学時代もわりと平日の昼間に暇し放題だったはずだけど、あの特別感はもうなかった。

たぶん、同じように暇を持て余して辺りをほっつき歩いていた、同じ大学の学生の存在によって特別感は失われてしまったんだろう。

それから単純に、私の通っていた地方大学の周辺には特別感を感じられるような遊びスポットが存在していなかったのもあるんだろうけど、悲しいのでこれ以上は考えない。

 

少し大人になって働き出して、外回りをしていた頃は平日昼間の街中を歩き放題になった。

ただ子どもの頃とも大学の頃とも違って都会に出てきたので、平日昼間でも街は人で溢れていて「世界に自分だけ」なんて感じる余地はどこにもなかった。

その特別感が失われたことだけを何となくさみしく思いながらも「平日昼間に、明らかに仕事でなく好きに街を歩いている人は何をしているんだろう」なんて少し羨ましく思っていた。

平日昼間は土日と違ってどこもそれほど混んでいない。仕事後の夜と違ってお店の閉店や電車の時間も気にしなくていい。そんな街を、私も仕事と関係なく気楽に気ままに歩いてみたかった。

 

 

そしてこの夏、仕事を辞めることになって昼間にもたっぷり時間ができた。

働いていた頃は「平日の昼間に出歩いていたら自分はどう見えるんだろう」なんてぐるぐると考えていたけれど、いざとなると気にならなかった。

考えてみれば平日が休みという職種の方はたくさんいるし、今の私ならギリギリ大学生か大学院生くらいにも見えるだろう。

そう思って、土日は混みそうだからと敬遠していた諸々の手続きをこの休みの間に済ませてきた。

それでも、平日に働いていた頃の自分が思っていたほど土日との違いはなくて「そういえば今日って平日なんだっけ」とハッとしたことの方が多いくらいだった。

 

いざ街に出て歩いてみると、平日の昼間でもショッピングモールは学生や主婦や平日休みのサラリーマンで普通に賑わっている。

病院や役所もやっぱりそこそこ混んでいる。

思っていたより、私が「ひっそり静まり返っている」だとか「特別な時間」だと思っていた平日昼間の世界は「普通に賑やか」な世界だった。

平日に働いていた自分からすれば、裏世界のような中身不明のびっくり箱のような世界だったけれど、そんな大層なものではなくて私が働いている間も淡々と世界は動いている。

少なくとも別に、私の知っていた土日だけ賑やかな世界が普通でもなかった。

 

また平日に働き出したら、平日昼間の世界は私には観測できない世界になる。

何が起きていようとリアルタイムでこの目で見て知ることは叶わなくて、私の知らないちょっとしたパラレルワールドが延々と続く。

どちらにしろ、平日に働いていれば平日昼間の世界を知ることはできない。ずっと休みの生活を送っていれば、平日に世の中を回している側の人々の世界を知ることはできない。

互いが互いにとってのパラレルワールドに近いと思うのだけど、自分の見ていた世界だけが当たり前になる前に、このタイミングでふともう片方の世界を思い出せてよかったなと思う。

もうすぐこの有給消化の日々ともお別れだけれど。単に休めたというより、色々なことを思い出せて気付けたことに意味があったと思う。新しい場所で、またこれから頑張ろう。