午前1時のレモネード

翌朝の化粧ノリより、夜更かしの楽しさが大事。

好きな人たちの思想までも愛したい人生だった

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今暮らしている街から地元まで、約100km足らず。電車で片道1時間半ちょっと。遠すぎず、近すぎず、まあちょうどいい距離だと思う。

 

問題は、私は実家と相性が良くないのに、実家に帰らなければ友人に会えないことだ。

私の交友関係にも問題はあって、元々深く狭く派な上に、地元も大学も今暮らしている場所からほど遠いので近くに友達と呼べる人が全然いない。

だから、友達と遊ぶとなると実家まで遥々帰ることになる(ときどき、今いる街の近くに実家がある大学のサークル仲間たちと会うこともある。ただほとんど異性なので、話が合わない部分がどうしたってある)。

 

とはいえ私は普段から人と会うと元気が出て充電できるどころか、消耗して疲れるタイプの生き物だ。近くにすぐ会える友達がいないのは、個人的にはそれほど問題でもない。本当に会いたい人にだけたまに会えればいいから、友人の居場所が遠いのは別にいい。

本当の問題はそこじゃない。こんなことを言うのも、反抗期が抜けきらない中学生みたいで本当に嫌なのだけれど。私にとって実家は最大の鬼門だ。

 だって、この人たちは「私を理解する」気なんてない。初めから「自分たちを分からせる、考えを正してやる」気しかないのだ。

ごちゃごちゃと書いたけど、要は私の親族というのは「特定の政党や政治的思想・新興宗教・時代錯誤な人種思想志向への差別」いずれか、あるいは複数の要素を持ち極端に傾倒している集団だと思ってもらえればいい。

 

親族たちの思想を「否定はしないけど私は同調できない」と言い続けているだけなのに、それを許されない。

それがなければ文句なく好きなのに。これさえなければ、たぶん私だって地元も実家も親族も、温かい大好きな場所だと思えたのに。

この人たちだって、居なくなったら間違いなく寂しくて帰ったらそこに居てほしいと思う。思うけど、いざ話すと思い出したように、でも必ず思想の話を始める。

ねえ、遠く離れて暮らしてたまに顔を見せた身内や親族に、思い出したように聞くことも話すこともそれしかないの?と悲しくすらなる。

 

もちろん、自分の対人コミュニケーションの下手くそさは自覚している。そんな私を気にかけてくれる家族や親族は、確かに優しくあたたかい人間ではあるとは思う。

だけどたった一つの重大な思想の違いで噛み合えない。噛み合わないのが分かっているから距離を置いて接しようとしているのに「分からないなら分かるまで話せばいいよ!」と食い下がられるのがキツい。あくまで、自分たちも歩み寄るのでなく「自分たちを理解させる」という方向性のみで。

もちろん地元が皆そうなわけじゃないし、親族だって男側は違う(放任なだけで守ってはくれない)。だけど私が最もよく接する親族女性は皆この調子なので「ずっとここに居たら間違いなく引きずり込まれる」と、中学校に上がる前には地元で暮らす未来を切り捨てた。

 

それすら許されず、逃げることもできない人も世間には多くいると分かっている。だから私は、何者でもなく好きにして居られる空間を手に入れた私は、まだ幸せなのだとも理解している。

だけどそれでも、当たり前のように「地元で暮らす」とか「いずれは地元に戻ってくる」という選択肢を持てなかったことは悲しいと思う。

 

親族たちは、例の思想を持っていても当たり前に地元で生まれ育っているから、自分たちの歪みに気付いてなどくれない。私からすれば、若輩者のくせに失礼ながら厚顔無恥もいいところだと思うことさえあるのだけど分かってくれない。

あなた達の親族だと、子孫だというだけで。狭い地元という世界ではいつ後ろ指をさされるか分からない。そんな気持ちはきっと考えたこともない。

 

いつどこから石を投げられるか分からないから、いつでも跳ね返せるように。陰口も正当化させることなく負け惜しみと言えるように。

どんな人にも認められるベクトルで優れた人になろうと、井の中の蛙ではあったけど物心ついた時から勉強にスポーツに必死になってきた私のことなんて分かるはずがない。

それすら自分たちの思想が正しい根拠に使おうとする親族たちを私が理解できないように、親族たちも私のことなど一生理解はしないだろう。

 

こんなことを知られたり巻き込んだりして、軽蔑されるのもフラれるのも嫌だから、私は家庭を持つことも半ば諦めている。少なくとも迷惑を掛けない幸せな結婚なんてできないと、憧れは持たないようにしている。

それなのに、親族が増えれば自動的に支持者にするつもりで「結婚しなさい、産みなさい」と言われると静かな殺意さえ覚える。私はもう、被害者を増やしたくない。

 

この思想を持つ私たちは正しい、だから幸せになれるしあなたも理解するべきだと言うのなら。あなた達の存在から「逃げる」ことでしか幸せになりきれない私の存在はどう説明してくれるのだろう。

知ってるけどね。「それは屁理屈だ」と言われるだけだ。「お前はちょっと勉強ができるからって調子に乗るな、確固たる信念もないくせに」と文字通りのお説教が始まるだけだ。

話せば話すほど「口ばかりで行動しないお前が悪い、まずは行動すれば分かる」しか言わないこの人たちに論理も自分たちの信念もないのだと分かって悲しくなる。参加するメリットさえ説明できない物事を人に勧めるなって言ってるんだけどな。

 

この人たちのために死のうとはそれこそ死んでも思ってやらないけど、生まれ直したいとは少しだけ思う。

どれだけ世間の人に褒められても。すごいねと認めてもらえても。後ろ暗いものと戦う武器としか考えていなかった私は心から笑えなかった。「そんなものに同調しなくても私は幸せだし優れた人物になれる」と証明したいがための、これはただの武装なんだって、言いたくても言えなかった。

あなた達が純粋に憧れて欲しいと願うものを、そんな道具や手段としか考えていなくてごめんなさいと。どこかで懺悔したかった。だけど、私だって被害者だと思うんだけど謝らないといけないの?とも、どこかで思っていて苦しかった。

 

生まれ育った場所を、同じ血を分けた人たちを。ただそれだけを理由に愛したかった。

分かり合えないこともあるけれど、それは皆それぞれ違う人間だから当たり前で、少しずつ学ぶところがあってそれぞれの思想を愛したかった。

個人で培った思想じゃなく、長いものに巻かれて乗っかっているだけの思想なんて私は愛せない。あなた達への親愛の情を捨てきれないことと、あなた達の思想に同調することは全くの別物だ。

 

頭では分かっている。そう言い切れているのに、心のどこかで親族さえも素直に好きだと言えずに思えない自分が冷たいか大人になりきれていないんじゃないかと悲しくて情けなくなる。

こんなバカみたいなことで、初めから悩みすら生まれないように。生まれ故郷はただ温かく幸せな場所であるように。好きな人たちのことを、思想まで当たり前に愛したい人生だった。