「ふつう」の分類学〜学歴不問、あなたも分類学者〜
最近、SNSのリアルアカウントで、書くだけ書いてそっと下書きに入れた呟きを供養。
なんかねー 自分たまたま女の身体で生まれてくることができたから苦しまなかっただけのオネエさんなんじゃないかって思う、最近。性的指向は置いといて。メンタルの不安定さは女性っぽいけどそれはホルモンバランスとかの身体的影響として、思考回路は男性の方が近しい気がする
例えば、私は昔から「人の気持ちを考えろ」と言われるのが嫌いだった。分からないからじゃない。現代文で作者の気持ちを読み取るのは得意だ。親しい人の気持ちなら考えて推定するのは大得意だ。
考えて分かった上で、分かるなら共感し忖度すべきで『普通』はそうするという風潮が嫌いだった。思考が読めたからと「かわいそう」だの「泣いた」だの、感情論を押し付けるだけで理屈の通らない、賛同できない思想に合わせる必要など感じなかった。(そもそも人に共感と忖度を求めるくせに、自分は同じことをしない時点で「共感」できるわけないよねしてないじゃんと)
そういうところが女らしくないと、女のくせに理屈っぽくて可愛くないと何度言われたか知らない。
べつに可愛がられたくて喋っているわけではないし、何より「理屈っぽくない女は素直で可愛い」だのと思っている奴には特に可愛いなんて思われたくはないから全く構わなかったけれど。
一方で決して自慢ではないけど、そういうところが格好いいと同性には褒めてもらえたし、女っぽくなくて付き合い易くて良いと評価をしてくれる異性も多くいた。でもそれすら何となく嫌だった。
何というか、息をするように当たり前に最善手をいつも選べているように見えるヒーローやヒロインのような。そんな評価が気持ち悪かった。
失敗は見栄を張って良かったこと風に喋っているだけで、全然かけらもそんなことはないのに。
そういった態度を隠して澄ますこともまた「当たり前のことをしているだけです」と言わんばかりのようで気持ち悪くて隠さずにいたら、周りには「お前は自信がない、もっと自信を持て、自己評価が低い」と言われるようになった。
私が自己評価低い(っぽい)と言われる理由について、思い当たる節はいろいろある。
もちろん、先に述べたように思考回路がテンプレ女性的でないというのも大きい。
大きいけれど、最近思い当たったさらに大きい理由は別で、そこから派生して将来にまで関わってくる。
それは、結婚願望も子どもを産み育てたい願望も昔から持てたことがなくて。その結果、思春期辺りからずっとある「いつもどこか他人事で、周りが当たり前のように『ふつう』に選んで果たしていく結婚や子育てを果たせないんだろうな」というコンプレックスだと思う。
例えば、ある人が想い人に告白した。誰かの恋が実った。どこかの二人が共に生きていくことを決めた。
そのことを頭では「凄いことだな、素晴らしいな」と思うのに、感情はどこか冷めていて「いいなあ、憧れる、羨ましい、いつか自分も」と思えたことがない。
ただひたすらに心の込められない「おめでとう」の言葉と拍手を贈ることしかできなくて、人や経緯によっては茶番だなとすら思ってしまうこともある。
悲しいことに、例えどんなに人として大好きで尊敬できる人同士のカップルであっても、私は「お似合いだなぁ、素敵だなぁ」と思うばかりだ。全くもって心は動かされなくて自分事にできない。
むしろさらに「綺麗な世界すぎて自分にとっては遠くの世界のことだ」という思いが強まりすらする。少なくとも、いつか自分も『普通』に通るであろう道だとは思えたことがなかった。
別に他人に恋愛感情を持てないとかでも、性的マイノリティとかでもない。こんな立場になんの名前もなくて、私はただマジョリティになれないだけ。
客観的に見て、その気になれば世間で『普通』と言われる以上の「『普通』の幸せ」を手に入れられる立場ではあるんだと思う。それも知っている。
だからある意味、私のような立場はどちらからも一番理解してもらえない気がするのだ。たぶんどちらから見てもきっとただのワガママだから。自分でも一応、理解はしている。
でも私が『普通』なのは当たり前で、『普通』なら何も言われなくなって放っておいてもらえるから、免罪符がほしくて足掻いて、その結果としてここにいるのだ。普通以下でも出過ぎても叩かれるか虐げられる可能性があるから、トップや勝ち組じゃなく、あくまで『普通』を目指してきた結果だ。
なのにここまできて、この先の『普通』らしいことが選べない。そうして、だから、こう言われる。
曰く。
ねえどうして、見た目も身長も性格もスポーツも学歴も勤め先も平均以上のくせして、どうせ自分はなんて卑下してやる気出さずに腐ってるの。普通以下の私たちをバカにしてるの、ずるいよ。
また別の人曰く。
ねえなんで、あなたは身も心も同じ性別で、普通に異性に恋愛感情も抱けて性的行為もできるくせに、してきたくせに、結婚できないなんて言い張るの。ふつうなのに、なんでそんなに捻くれてるの。どれかひとつでも欠けただけでこんなに苦しんでるのに、なんで全部持ってるあなたが苦しそうなの。
さすがに少し脚色したけれど、だいたい似たようなことを言われたことがある(いわゆる空リプ的な言われ方も多々あるけれど)。
『普通』らしいのに、ふつうのことがふつうにできない。興味を持てないし好きになれない。それは苦しんじゃダメなんだろうか。ただの贅沢な悩み、ワガママなんだろうか。ーそうなんだろうな。
あーあ。こんなことで悩みたくないから結婚してしまえたらいいのに。人を利用できるほど割り切れない。
例えば「とりあえず実家を黙らせたい」とか「同居人がほしい」とか「誰かと一緒にごはんを食べたい」とか、目的はそれだけという人と利害一致の契約結婚ができればいいのに。
「帰ったらご飯を用意して待っていてくれる奥さんがほしい」だの「幸せな家庭を築きたい」はごめんなさい、だけど。そんなんじゃなくて良いと言う、自分の片割れみたいな人を見つけて一緒にいられたらいいのに。
もしかして、そんな片割れを奇跡的に見つけた人だけが結婚してるのかな。
とにかく。
それこそ驚くくらい『普通』に、なぜかほとんどの人が『普通』の人と『普通じゃない人』を分類できる。
もちろんその基準は居場所によって変わる。玉石混交の環境では特別なエリートだった人間も、玉しかいない選ばれた環境に行けば『普通』かそれ以下になる。流行みたいに時代によっても変わるだろう。
それでも、必ずどんな環境生態下でもまず『普通』を分類するボーダーラインが決められて、ボーダーに沿ってそれぞれの環境がつくられていく。こっち側は普通、それは普通じゃない、あれは普通じゃないけど特別カッコいい上位種。あれはイケてる、あれはイケてない、のジャッジを瞬時に冷徹に行える。
これって結構特殊能力に近いのではと思うのだけど、それすら『普通』だとされるのがこの世界だ。それならいっそ私にも。その能力で、分類名をくれたらいいのになと思う。