午前1時のレモネード

翌朝の化粧ノリより、夜更かしの楽しさが大事。

やっぱり私はまだ中高生のままなのかもと思った話。

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よくある話すぎて、自分が見かけても手を止めるか分からないくらい、本当にありふれた話をする。

本気ですごく気の合う、仲の良い友人だと思っていた数年来の男友達に告白された。

 

こちらの市内で夕方まで用があるから、それが終わったら飲まないかと言われ、暇だし良いよと言って会う、時々だけどよくある予定だった。用というのが共通の趣味に関するものだったので、その話なら私が呼ばれるのも不思議ではないなと何も考えなかった。

正直向こうも結構飲んでいたし、私も酔って頭がふわふわして「眠い」という意識しかなかったので、あれは現実だったんだろうかとさえ思う。

本当にそんな雰囲気も何もなく、シチュエーションもそれっぽくなんかなかった。ただ駅で別れようとしたら呼び止められて、終電までまだもう少しあるから構内でお茶でも付き合えと言われるのかな、もしくはカラオケ二次会か、なんて思って怪訝な顔で振り返ったら出てきた言葉が告白だった。

申し訳ないけれど、全く心拍数に影響はなかった。ただただ狐につままれたように、本気で「こいつは何を言っているんだろう」とだけ思った。たぶん顔に出ていたと思う。失礼ながら、ちょっと迷惑そうな顔だったかもしれない。友達じゃなかったのと裏切られたような思いもしなかったけど、ときめきもしなかった。

なんと返事をしたのか、というか、どれが返事だったのかも分からない。そもそも気持ちを伝えられただけで、返事を求められているのかも分からなかった。

ありがとう、でもごめん、君をそういう風には見てないし、そもそも今恋愛をする気はない。そんなことを数回繰り返した気がする。本当は聞きたかったけど、私が安易に誘いに乗るから勘違いさせたのとか、思わせぶりだったのかとは聞けなかった。いつからともさすがに聞けなかった。

 

学生の頃だったら仕方ないと、自分にもそう思わせてしまうところはあったのかなと思えたと思う。異性で仲の良いふたりがいたら、そんな話が出るのは悲しいけど当然の流れはあった。

だから当時は、カレシとか付き合うとか興味ないですと枯れた女子であることを全面にアピールして、男友達たちにも周囲にも、決してそんな勘違いをさせないようにと振舞っていた。

けれど社会人になってからは、結婚する人はもちろん、長く付き合っている結婚前提の恋人がいる人、もしくは仕事が忙しくて恋愛どころではない人も増えたからある程度落ち着いてきたし、予定が合う奴だけで集まろうなんてことも多くなった。

だから、ああやっと、細かいことを気にせず男女の友情ってやつが成り立つようになってきたのかななんて思い始めたところだった。

 

 

本当によくある話すぎて、ショートショートすらきっと書けない題材だなと思う。

私はそんな、本当によくある「みんなは男女の友情なんかないって言うけど、そんなことないよね」と言っていたらそうじゃなかった、に直面しただけ。

やっぱりないのかな。年齢とか関係なくないのかな。互いに彼氏彼女がいなければ、もしくはいたとしてもあり得ることなのかな。

私はただただ、流行りのファッションやメイクだの彼氏との最近のデートや結婚の予定だのの話をしたくないだけだ。「部活の練習がしんどい」と愚痴ったり「このマンガが面白い」と盛り上がれた学生時代のように、仕事がしんどいとかこのアニメが面白いとかこの曲いいよねなんていう、マウンティングの欠片もない話で笑っていたいだけだ。

 

そんな話をできる同性の友人ももちろんいるにはいる。いるけれど、やっぱり同性だからこそ女性ならではのキャリアの話とかになってしまう部分はある。

社会人になると、嫌でも女性が男性と全く同じように生きていくことの難しさに何度も直面した。けれど彼らと話していると、例え錯覚でもそんな差がないみたいに感じられてうれしいのだ。同じように努力していれば、勉強していれば、彼らとも並んで歩いてゆけると信じていた学生時代のように。

いくら気を置けないとは言ってもたぶん、男友達たちは気を遣ってくれていることも分かっている。下心があるわけじゃないと安全地帯を築き、女はいいよななんてことは言わない。

私が彼らに女を感じさせないように、オタサーの姫みたいにちやほやされたいわけじゃないと釘を刺すように、必要以上に男っぽく振舞ってしまうのとたぶん同じだ。

 

別に学生時代みたいに、告白されたからといって裏切られたというように距離を置くことはないと思う。さすがにそこまで子どもじみたことはしない、できない。知りたくなかった、言わないでよとも言えない。

でももう、前ほど気軽に誘いには乗れない。お互い気まずくなりたくはないから、もちろんこれからもよろしくと言って別れたけれど、全く何も意識せず変わらないことはできないだろう。

申し訳ないけれど、告白されたからといって、意識することはない。本当に本気で、気が合いすぎて兄弟みたいに思っていた。思考回路が似すぎていて、同族嫌悪とはいかないけれど恋はできないなとも思っていた。身内に恋はできないから、本当にどうにもならない。

社会人になってからも、今日いる男があいつとこいつらならまあいいかと、借り物の兄弟の服でほぼすっぴんで会ったことも何度もある。異性だけど、結婚式に出られそうなくらいには気の置けない間柄だと思っていた、それでもあくまで複数の中のひとりだった。

 

 

何より、 出会った時に彼女持ちだった相手は「対象外」で「安全圏」に位置付けてしまうし、一度そうなったら私の中での位置付けは変えられないようなのだ。

恋愛を持ち込まずに異性とも友人関係を築けるようになったって、自分たちも大人になったなって、少し喜んでいたのにな。結局中高生の頃と変わらないことで悩んでいる自分がいる。

さすがに一対一で会うことが出てきてからは「こいつその気があるのかな」とか、全く何も考えたことがなかったわけじゃない。でも「今更すぎるし、会っても趣味の話しかしてないから好かれる要素もないし、そんなことはない」と都合よく信じていた。だから今回はもう何も考えていなかった。

 

裏切られたとかそんなことじゃなく、うまくやれていると勘違いしていたことが情けない。仮にも好意を告白してもらって喜ぶこともできない自分が悲しいし、どこか他人事のようにこんなことを考えている自分に呆れる。

25歳になって、四半世紀も生きてきて、未だに「結婚する」「家庭を持つ」といった、世間一般的な意味で「幸せになる」過程と自分を結び付けられない。

そして「私がこんなんだから、相手だってこんな私と幸せになりたいなんて求めてこないだろう」とタカをくくってまた失敗する。

性欲がないとか、同性が好きとかそんなことではない。異性が好きだしそういうことも嫌いじゃなかった。ただそこまで強い恋愛感情が持てなかったのと、その先に結婚とかを思い描けたことがなかっただけで。

 

私はこれからどうしたらいいんだろう。

きっと皆もうすぐ結婚してしまう、そうしたら遊べることもきっと少なくなるからと、社会人2年目後半からは同性異性問わず、友人からの誘いにはとにかく乗った。それで後悔することはないと思っていたらこれだ。

でももう学生ではないし、自意識過剰になるほどの美人でもあるまいし「異性の友人とは会わない」なんてことを言うのも違うと思う。うーん。自意識過剰だとしても、せめて一対一の誘いだけでも気にしてちゃんと断るべきなんだろうか、悲しいけれど。

喜ぶのも反省するのも、後悔するのも嫌悪感を抱くのもきっと違う。これで大切な友人を失ってしまったと嘆くのもさすがに違う。

まわりはどんどん一緒に歩く人を見つけて大人になってゆくのに、私だけ一人ですらまともに歩けないままだ。