午前1時のレモネード

翌朝の化粧ノリより、夜更かしの楽しさが大事。

独りでいたくて、一人ではいたくなくて、痛々しくて

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「一人でいるのは平気だけど、孤独なのは苦手だ」と言うひとがいる。

休日に一人でカフェに行ったり買い物に出たりできるけど、その時の話を誰かと共有したい。一人でいるとしても、その時のことをどこかのSNSにアップして繋がっていたい。そんな感じらしい。

 

私はその逆だ。誰といても、ぽかんと自分だけの思考に逃げ込める孤独な世界にいたい。その孤独さが確保されないのは苦手だ。でも、一人で行動するのはもっと苦手だ。だって怖いから。世の中に馴染みきれていないから、世の中の全てが、漠然と怖い。

自分は世界のルールに馴染めていないような気がする。知らないうちにダサくてみっともないことをしているんじゃないかといつも思っている。いつまで経っても自分はどう足掻いたところでおのぼりさんで、そのくせ見た目だけは都会のOLぶっているからより質が悪いし痛々しい。

たぶん、張りぼてのおのぼりさんよりも、一見地味だけど生粋の都会育ちの子どもの方が、よっぽどスマートに街を泳いでいる。

例えるなら、私は速く泳げるようになったけれどバタ足の犬掻きしかできないのだ。でも、元々ずっとここにいる人は、例え私より遅くても綺麗なクロールですいすい泳いでいる感じがする。そのことが、被害妄想かもしれないけどいいなぁと思う。

 

一人でどこかで何かをしようとする時には、その度に「もしこれから事件に巻き込まれたらどうなるかな」とぼんやり考える。

まあきっと、女一人でふらふら出歩いてるのが悪いってなるんだろうな。そうだろうな。

そう思うと、歌うのも漫画も好きなのに、近くのカラオケにも漫画喫茶にも一人では行けないなぁなんて立ち竦む。別に何もない可能性の方が高いとは分かっているけど、それでも女一人だと分かるとドアを叩いてくる人間というのは実際いる。何も起きなかったとしても、そもそも遭遇自体したくない。

 

もっと言ってしまえば、それなら一人暮らしだってするべきではないんだろうと思う。昔から定期的に見る怖い夢は、見知らぬ人が部屋のドアの目の前にずっと居たり、ドアを開けようとしている夢だ。そうして夢から覚める度に、夢と現の区別がつかなくてしばらく静かに震えている。

今は玄関オートロックでダブルロック付きのマンションに住んでいるけど、それでも「鍵を開ける時やエレベーターに乗る時に一緒に入り込まれたらどうしよう」と思う。

ああ、あと寝てる間に死んだらどうしよう。心臓発作とか起きたら誰も助けてくれないのはもちろんだけど、誰がいつ気付いてくれるんだろう。

病んでるのかなぁと思うけど、昔からずっと常に薄っすらそんなことを考えている。

 

だから、私を物理的に一人にしない誰かが居てくれたらいいなぁ、と空想してみる。

別にいつも一緒に居なくていい。何もせず空気みたいにそこに居てくれて、その場に私がいることを肯定してくれる存在が在ればうれしい。

誰かと一緒にその場に居るというのは、その場にその人が在る事実を肯定する。「誰かに付き合って来た」だけで居る理由になるから、いいなぁと思う。

なんて言いつつ、そんなことで誰かの都合を変えたくないし、特定の人とベタベタといつも一緒にいるのも苦手ときた。だから、いつも一人だけど一人でなんにもできない私がこうして出来上がっている。

 

本当はたぶん、もし「一人で何かするのは嫌だなぁ」と呟けば、一緒に行くよと行ってくれる人はいるんだと思う。でも私が安心するだけで、その人に何も楽しいことを返せないのに呼びつけるなんてことはできないからやった試しはほとんどない。

頼まなくてもやってくれる唯一が家族なのだろうけど、彼らは「独り」にしてくれないからダメなのだ。

ねえ今日は何してたの。今どこにいるの何してるの誰といるの。そんなお節介で、愛情や興味や関心と称して全てを知りたがる近所のおばさんのようにずけずけ踏み込んでくるコミュニケーションを図られると、わあっと泣き叫んで何もかも放り投げて逃げたくなる。

実際はそんなことできないから引きつった笑いだけ浮かべて誤魔化すし、家族以外でそんな事態に陥りそうなシチュエーションは避けてきた。踏み込まれたくないから踏み込まなくて、一人で独りな可哀想な生き物は完成した。

 

息をするみたいにそこにいるのが当たり前の他人がいたらよかった。幼馴染とかいたらそうなんだろうか。あれは漫画やアニメの中だけの存在だろうか。

そんな存在が欲しくて世の中の人たちは恋人を作るのかもしれないけれど、私にとって恋人は「友人とは違う特別扱いをしないといけない人」という感覚が抜けないので、完全にそんな扱いにはできない。

独りをくれるけど、一人にしないでくれる存在でいてほしいなんてわがままを誰に言えばいいんだろう。縛られたくないから縛らないけど、手を伸ばせば届く、せめて目を凝らせば見える距離に誰かが居て欲しかった。でも私が誰かにとってのそんな存在じゃないから。たぶん、ダメなんだろう。